【書籍紹介】『習近平の敗北』福島香織 著、ワニブックス 刊

『習近平の敗北 – 紅い帝国・中国の危機 -』

 この衝撃的な標題は、福島女史が単なるセンセーショナルを売りにしているのではない。

 紅い帝国を牽引する習近平主席は、毛沢東(マオイスト)の再来を意識、中国共産党なる一党独裁「党政軍民学」を己が掌で躍らせ、世界制覇の野望に血眼になっている。

 為れど、冷静・沈着に支那の国情を分析する筆者は、「九の乱・厄災」( 五九年・チベット動乱、八九年・天安門事件他)厄年「九の悪夢」に苛まれ、砂上の楼閣は風化、敗北すると読む。

 習近平との融和が内部で崩壊、暗殺や少数民族弾圧の持続―。習体制の敗北最大要因は、親中・日和見主義者バラク・オバマやヒラリー・クリントンの融和の対極にあるトランプ大統領との軋轢および嫌中に舵を切った一部の民主党だということ。

 米国や我が国の左傾メディアは、奇態とトランプを批判する。その地政学に則した様態は、習の独善を明確に譲歩しない。膨張する軍事力や一帯一路による一国膨張野蛮政策。この無謀な振る舞いを防ぐのは、日本でも、ましてや東南アジアにあらず。

 もし、クリントン大統領が誕生しておったならば、習世界制覇の危機に侵食されていた。何しろクリントン財団は支那より献金を受けておるから…。

 また、習主席の誕生そのものが、優秀なる指導者としてのお墨付きにあらず、江沢民と胡錦涛の派閥争いの末、妥協の産物として習近平体制の誕生となる。

 「習は無能」・李鋭(毛沢東秘書)は語る。ペンス副大統領も「中国を仮想敵として叩く意志がある」( 福島)― 支那習体制は、先端技術の窃盗、監視国家そして異常な少数民族抹殺。

 しかし、クリスチャニズム精神で繁栄した米国、その国力は確実に低下しておると筆者は言う。「北京コンセンサス」なる権威主義的市場経済モデルをかざし、アジア・アフリカを取り込む圧力は、世界をどう変えるのか。

 また、親支那で媚びる我が国の政治家財界人の無知に筆者は警告する。中華秩序なる欺瞞は崩壊する―ここ数年が山場である。その時、日本の立ち位置やいかに。眼から鱗の名著で慧眼。

(評者 文藝評論家 蓮坊公爾)