【書籍紹介】『国風のみやび』荒岩宏奨 著、展転社 刊

『国風のみやび』

 日本人が日本人たらしめているのは、崇高な歴史・伝統文化を神々の黄昏より、平成の今日まで綿々と伝承して来た事による。

 此処には、万葉のいにしえより持続なされし「やまとこころ」を守るべく本居宣長の言霊(唐意を廃する)の響き。天壌無窮・天皇の威光(耀き)に満たされし安住の地、大和島根に生きる日本民族にうまれし有り難みがある。

 天神(アキツミカミ)は、独裁者なる西洋の王族と異なり、統治方法は臣民の生活様式守る為でもある。また稲穂を育てるスメラミコトが統治するその意義(祭り)を再認識する。

 「西洋近代の呪縛からの解放、日本への回帰」(著者)を心眼に投射致す――結果として国体から育ってきたもの。これを著者は「国風」―くにぶり―と解釈いたしております。この「くにぶり」は、君臣一体なる実態により栄えるのである。

 天孫降臨なる神々の定め、保田與重郎や蓮田善明。日本民族の独自感性なる精神(みやび)の神髄を解きほぐす真姿がある。社稷政治の道筋を一点の曇りをも廃した正論。

 故に、本書は真実に慧眼致した憂国の名著と呼びたい。神ながらの道かくあるべし―目から鱗が落ちるのである。

(文藝評論家 蓮坊公爾)