【書籍紹介】『新・東京裁判 GHQ戦争 贖罪計画と戦後日本人の精神』産経新聞出版 刊

『新・東京裁判 GHQ戦争 贖罪計画と戦後日本人の精神』

 本書は、国士舘大学創立100周年を記念した「国士舘大学極東国際軍事裁判研究プロジェクト」の総括として、ジャーナリストの櫻井よしこ氏、産経新聞論説委員兼政治部編集委員の阿比留瑠比氏、麗澤大学大学院教授の高橋史郎氏、駒澤大学名誉教授の西修氏、外交評論家の加瀬英明氏、国士舘大学法学部教授の篠原敏雄氏が集結。大東亜戦争後、米国を中心とした連合国体制に酔いしれる日本人の「覚醒」を願い刊行された。

 本書の特徴は、立場や専門分野が異なる6人が「極東国際軍事裁判」という一つの課題に対して向き合い、対峙している点だ。執筆者が単著で書くこともできるはずのところを、一つの本にする所をプロジェクトとして一冊にまとめた意義は非常に大きく、充実した内容だった。

 内容も、甲乙つけがたい中ではあるが、私が一番考えさせられたのは明治維新を成し遂げた志士たちと、現代日本人を比較して「現実感覚」や決定的に「気概」が欠けていると論じた上で「『ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)』のレールが敷かれてしまっていて、まだ私たちはその上を歩んでいるに過ぎないからだ」という箇所だ。政治運動に携わる者なら一度は考えたことがあるだろう。何を以って戦後体制からの脱却と言えるのか。どうすれば、強い日本を取り戻せるのかと。その問題に対して歯に衣着せず、タブー視される中にあっても切り込み「明治志士にあって現代日本人にないもの」を書いた所は、自らを顧みながら実に痛いところだと思えた。

 極東国際軍事裁判が現代日本人に遺していった傷跡は大きい。しかし、それを乗り越えないことには次に進むことはできないのだ。
この本は、政治運動に携わる者なら基礎知識の勉強としてもぜひ読んでほしい、そう思えた。

(評者 九十九晃)