【書籍紹介】『磐座百選』池田清隆 著、出窓社 刊

『磐座(いわくら)百選  -日本人の「岩石崇拝」 再発見の旅-』

 著者は、「いわくら」研究家である。数十年を費やし、日本全国350箇所の磐座石を検証したのが本書であり、唯一の高著。

 自然崇拝を神道に立脚し語る民俗学者は、柳田国男等多々をる。然し、「岩石に神宿る」神想観(日本人の固有なる信仰)―「命」崇める心魂を、単なる岩石と唯物的に解釈する愚をやらず、石の霊性体感する愚をやらず、石の霊性を体感する術を池田氏は語る。

 其の一例として鈴木大拙「石は堀り起こされし寸時モノを言う唯心と化し、ワレに向かゐて返事する」を添える。此れが日本人の感性であり、なびく草木に戯れるスズムシの儚き音色に歌を詠む感応と同一である。石と一体となる事に依って、其の母性の温もりとカミ宿る神域が感じられるのだという。

 岩石信仰を分析する。イワクラの語源、定義の説明。北海道から沖縄まで(例・高千穂町「天岩戸神社」)多色刷りにて紹介している。

 ガイドブック以上、学術書と把握している吝かではないんだ。神職、國學に携わる人を問わず、日本人の常識・知的財産として手元に引き寄せて戴きたい。

(評者 文藝評論家 蓮坊公爾)