元総理銃撃の衝撃!テロ防止策(日本国民党代表 鈴木信行)

安倍晋三元総理銃撃事件の現場(事件翌日)

安倍晋三元総理銃撃事件の現場(事件翌日)

 7月8日、安倍晋三元総理大臣が奈良市で選挙応援の演説中に銃撃され、亡くなった。

 総理大臣在職期間最長記録を持つ安倍元総理は、まだ67歳の若さで再登板を期待する声もあった。

 ロシア・北朝鮮との国交正常化など、外交課題は未達成で終わり、皇位継承問題は皇室典範改正が進まず解決していない。

 大命題であった憲法改正も道半ばとなれば、政治家・安部晋三はやり残した課題が多く、まだまだ政権に未練が残ったのだろうか。それとも後を託す者を見定めていたのだろうか。これは本人にしか分からない。

 日韓合意の失策、貧困層増大の原因である新自由主義経済を推進したアベノミクスの評価を厳しく見るべきだが、日本国民は寛大な国民性といえよう。

 安倍晋三元総理は天皇陛下から、わが国の宰相として最も長く国の運営を託された政治家だ。安倍晋三元総理逝去に対して、哀悼の意を表し、ご遺族にお悔やみ申し上げる。

政治家は狙われる存在

 政治家はいつ襲われるか分からない。襲われる動機は政治的・思想的であろうが、個人的な不満からだろうが、いつの時代も標的となる対象なのだ。

 政治家は経済的にも恨まれる対象となる。経済政策により家業が倒産した者や、自身の運命を為政者の責任とする者もいる。

 例えば、私の地元・葛飾区鎌倉町では、区立公園内のプール廃止問題で、多くの廃止反対署名が集まった。

 私は地元議員として廃止に賛成した。その代わりに多機能型公園に生まれ変わる改修工事を実施した。プールは夏の40日間しか使えないが、改修すれば夏はじゃぶじゃぶ池で冬はアイススケートリンクになるという私の提案を葛飾区公園課は受け入れてくれた。

 だが、廃止反対派は、私を恨んだことだろう。たとえ一部の住民に恨まれても、地域全体の利益と発展のためとの信念に基づいて臨むのが政治家だ。

政治家の覚悟

 各政党党首は、今回の元総理銃撃という凶行に、口を揃えて「民主主義への挑戦」「断じて許せない蛮行」と言っているが、誰もが政治家となれば標的の一人ということを認識しているのだろうか。

 どんなにテロリストを批判しても、彼らが襲うときは場所も時も選んで襲うのだ。狙われる者より狙う方が有利だ。銃で狙撃できなければ、自分も爆弾で爆死する覚悟の刺客を阻止することは難しい。

 国際テロ組織アルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ氏を米国は殺害した。かつて米国は、米軍特殊部隊による急襲でビンラディン氏を殺害した。その後のアルカイダを率いてきた人物だ。

 米国は諜報活動で正確に行動を捉え、密かに潜伏していたアフガニスタンの首都カブールの建物のバルコニーに出たところを、ミサイル攻撃で殺害した。

 テロリストや刺客に襲われて死んでも男の本懐と思う人物が、政治家になるべきだ。タレントも売れなくなったから参議院議員候補に立候補するのではなく、殺されても法改正するほどの覚悟で政治に命を賭けていただきたい。

 日韓基本条約を進めて対日交渉で外交的勝利を得た朴正煕大統領(当時)だが、その時点で韓国国民に殺されても不思議ではなかった。北朝鮮の方が経済的にも発展しており、韓国はいつ侵略されても不思議ではない朝鮮半島の情勢下にあったのだ。日本のマスコミに独裁者と批判された朴正煕大統領の決断で韓国は発展したのだ。日本は韓国から金をむしり取られ、技術移転して現在の日韓関係に至っている。

 独裁と批判されたが朴正煕大統領は、漢江の奇跡を起こして韓国を発展させた。

 そして、長期政権の最後に銃弾に倒れて死んだ。日本のマスコミには独裁者と批判されたが、祖国を発展させたのだから、殺されても男子の本懐だっただろう。

 安倍晋三元総理は選挙演説中という政治家としての戦場死だ。志半ばとはいえ、銃撃され亡くなったことは、「政治家の本懐」ともいえまいか。

テロを防ぐには

 政治家になったのなら、命と引き換えにしても取り組む政策を持っていただきたいものだ。明治期に不平等条約改正問題で国論が二分され、改悪を阻止するために来島恒喜氏は爆弾を大隈重信外相に投擲した。条約改正は阻止されたのだ。爆弾で片足を飛ばされた大隈重信外相は、来島氏が事件直後その場で自決した10月18日の法要に、毎年代理人を送って参列していた。討つも討たれるも国の為だ。

 安倍元総理の死は残念だ。そして死は突然に来るものだ。政治家とは命を狙われる存在と、政治家自身も考えるべきだ。人はいつ死ぬかわからないのだ。「民主主義への挑戦」「断じて許せない蛮行」と、政治家がテロリストを批判するのなら、テロを事前に阻止する公安の諜報活動に予算を大きく割く努力をすべきだ。

 戦後の自治体警察の限界が、今回の悲劇に見て取れる。自治体警察の枠を壊さなければ、警視庁以外の地方警察では、警備力に差がありすぎる。

 政治家がテロリストを口先だけで批判するのは、「遺憾の意」を連発している日本外交の無力な「遺憾砲」と同じだ。狙われる者より狙う者の方が有利なのだから、事前に防ぐ諜報活動を増強するしかない。

 貧困層が増大している現状では、政治家を狙うのは思想犯だけではない。世相が混沌とすれば、危険になるのが政治家だ。

 鬼平犯科帳のモデルとなった火付盗賊改方の長谷川平蔵は、元盗賊を飼い慣らしてスパイにして情報を集め、江戸市中を荒らす大盗賊を捕え処刑していた。事件が起こる前に不審者情報を集め、捕えて処刑したのだ。

 政治家でありながら何ら行動せず予算に関与しない。声高に批判だけ、盲目的に賛成するだけの政治家を信用してはならない。

 ところが、きれい事と口先だけの政治家は、テロの対象ともならずに長生きしそうなのだから皮肉なものだ。

(日本国民党代表 鈴木信行)