【書籍紹介】『マルチグラフト』神本秀爾・岡本圭史 編、集広舎 刊

『マルチグラフト:人類学的感性を移植する』

マルチグラフトとは、接ぎ木の造語だと云うこと。幹に別枝を挿し多種な花を咲かせ楽しむ。

多様な価値観(宗教を含む)を有するあらゆる国家に於いて、独善排他意識を止め「人類的感性を移植」する―共存へのオマージュが述べられて居る。

本書は、21のエッセイとショートエッセイ2点を網羅して居る。

国境・難民、民族紛争や教育―魔女の問題点。地域社会に於ける融和等、多面的複眼で真摯な人間を見つめる視線は、文化人類学を柔軟な実証主義にて掲示してをる。

〈解る〉を前提として理解する読者の為に、短文で豊かな内容を載せたのである。難解な解らない―わかる豊かさへと導いてくれる……。

ウチナーンチュ(沖縄出身者)とヤマトンチュ(日本人)の日常の相違。チベット人の民族高揚とインド国籍取得を求める仲間との屈折したパトリシイズムの側面。

土着宗教を異端と排し、一神教の価値を文明の神髄とうそぶくクリスチャニズムの毒矢。固執した人間の頭脳構造を、柔軟にほぐすのも筆者たちの努力の賜物である。

「偶然の出会いの連鎖を楽しむ」(小西賢吾)―此の本にて発見出来ると云いたい。

話は少しそれるが、吉本誉絵女史(『日本は本当に「和の国」か』著者)がノースダコタ州立高校に留学中、食前「アーメン」と祈る白人を真似るが小さく「いただきます」と言ったとき、此れを聞いたアメリカ人が、〈食物への感謝〉する日本人に感動、以後「いただきます」と言い、今に至るそうだ……。

これぞ正しく〈出会いの連鎖〉の端的な一例である。

(評者 文藝評論家 蓮坊公爾)

『日本は本当に「和の国」か』