統計的数字に基づく 右派政党国政進出の展望

 先月号にて、欧米と日本の実例を比較した記事「日本に極右政党は台頭するか?」を掲載させていただいたところ、様々な反響をいただきました。その中でも「いつ頃になったら右派の政党は国政に進出できるのか?」と気になった方も多くおられましたので、今回はそのあたりの展望について考察していきましょう。

移民流入が極右躍進の燃料となる

 ヨーロッパにおいては小選挙区制度を採るフランスを除き、比例代表制を採る国においては移民の人口比と極右政党の議席占有率が比例する傾向にある事は先月号で紹介した通りです。

 徳島大学大学院の樋口直人准教授は『日本型排外主義―在特会・外国人参政権・東アジア地政学―』において「(西欧では)極右政党より反移民政党という言葉の方が正確という議論もある」とした上で、「極右政党が支持を伸ばしたのは、『近代化の敗者』という特定の支持基盤にアピールしたからではなく、属性を越えて広がる反移民感情を票に変換したからである」と指摘しています。この前提に基づいて、我が国でも外国人人口の増加にともない右派政党の得票が伸びるのではないかと考えてみます。

 平成28年の参議院選挙比例代表において、「日本のこころ」は全国で734,024票( 得票率1.31%)を獲得しました。この時の外国人人口は2,382,822人で人口比にして1.88% でした。この時の「日本のこころ」の得票率が外国人人口比に対してちょうど70%です。

 今年おこなわれた参議院選挙に右派政党は出馬しませんでしたが、各種統計数値を元に計算した仮想得票数は733,057票で得票率にして1.46%でした。本年の外国人人口比が2.09%に達する見込みです。するとこちらも、外国人人口比に対して右派政党仮想得票率が、ちょうど70%となります。以上の事から、「日本の右派政党は外国人人口比の70%の支持を受ける」という仮定で試算を進めます。

 現在、日本国内には平成30年時点で2,637,251人の外国人がおり、日本全体の人口比に対して2.02%を占めるており、その数は年々増加を続けています。

令和十年前後に転機到来となるか?

 現在の国政選挙制度では、政党要件を獲得して国会議員が当選する最低ラインは参議院比例代表で得票率2%前後を得ることです。そうすると、外国人人口比の増加にともない、そのハードルを超えるとみられるのは、外国人人口比が2.72% に達するとみられる令和10年の第28回参議院選挙です。この人口比を単純に得票に換算すると953,375票で政党要件獲得に迫るものと考えられます。

 外国人移民の増加率が加速したり、平成20年の北京五輪長野騒乱事件や、平成22年の尖閣諸島支那漁船衝突事件のように大きな衝撃を与える事件が起きて、世論が急速に高まれば更に転機は早まるかもしれません。

平成22年の尖閣諸島支那漁船衝突事件

右派勢力の得票は20年で3倍増!

 平成11年の統一地方選挙で右派政治団体公認候補の平均得票率は0.29%でしたが、平成31年の統一地方選挙での右派政治団体公認候補の平均得票率は0.89%でした。右派政治勢力の地方議会における得票率は20年間でちょうど3倍に増えている事がわかります。そうした事実と併せて考えれば、今後の約10年間における右派勢力の伸長の試算も、より一層現実味を帯びて感じられるのではないでしょうか。

来たる日に備えよう

 しかし、仮に政党要件を獲得して国政に進出したとしても、衆議院選挙に挑戦出来る実力が備わるのは更に先であり、参議院選挙においても、まだまだ「風頼み」の側面が強く、他党同様に支持率の低下や、他党の躍進にまきこまれ、その次の参院選では議席獲得に失敗したり、政党要件を喪失する事態もあり得ます。そうなっても戦い続けられる組織のしっかりとした核が無ければなりません。

 国政にともない地方選挙でも着実に躍進する流れが見込まれます。首都圏をはじめ全国の大都市圏や中核市などで右派勢力の候補者が当選する可能性は高まっていくものと考えられます。

 そのためにも、都市部などの混戦が予想される選挙区では右派勢力の共闘を進め、統一候補擁立を目指すのが望ましいのは言うまでもありません。そうした右派地方議員たちを大勢擁して、様々な場所で戦う同志を糾合する事によって、国政選挙も戦える組織の核が建設されるのです。

 そして何よりも、これからの10年、20年といった次世代の戦いを担う後進、若手の育成が大きな課題となっていきます。少子高齢化で若手の確保と育成は難題となっていきますが、いま10歳の子供たちが初めて選挙で我々に投票してくれる社会を目標に進んで行きましょう。

 これからの時代、危機とチャンスは同時にやって来ます。日本人にとっては苦難の道になるかもしれませんが、その来たる日に備えて、日本の国体・国民・国益を守るために戦える組織を全力で作っていきましょう。

(しんぶん国民 令和元年10月号より)