【書籍紹介】『日韓の中学生が竹島(独島)問題で考えるべきこと』下條正男 著、ハーベスト出版 刊
『日韓の中学生が竹島(独島)問題で考えるべきこと (知っておくべき竹島の真実4)』
令和2年3月に第4回島根県竹島問題研究会によって発行された、「知っておくべき竹島の真実」シリーズの④。近年、韓国の中学生が「独島は韓国領」と主張する手紙を島根県の中学校に送付していることを受け、竹島研究の第一人者・下條正男氏が、手紙に書かれた主たる根拠10点について検討を加えたもの。
朝鮮の歴史書である『三国史記』『世宗実録』の記述、江戸時代における幕府の対応や地図の問題、明治以後の日韓両政府の領土管理と、時代に沿って丁寧な争点解説が示される。日韓の中学生向けとされ、目次を入れて87ページとハンディーではあるが、史料の解釈を丁寧に述べており、かなり読み応えがある。論点をしっかり知りたい方にはうってつけといえる。
本書を読んで改めて気付かされるのは、韓国側が「我が国は古い時代から竹島を領有している」と歴史解釈を基礎にして主張している事実である。「そんなことは当たり前だ」と言われるかも知れないが、この点は案外、一般に理解されていないようである。たとえば、少し前に「竹島が日本領と記載されているアメリカの軍用地図が発見された」というニュースが流れ、日本有利として喜ばれていた。だが、韓国は歴史を軸に領有権を主張しているので、戦後のアメリカが竹島についてどのように認識・判断したかという問題は、議論の本筋にはならない。
日本側としては、韓国側の主張する〈歴史的根拠〉の誤りを学問的に突くのが正攻法である。下條氏や、島根県竹島問題研究会の長年の取組みはまさにそれに当たるが、日本政府の取組みは至って乏しい。政府の積極的取組みをうながすことが、愛国運動に課せられた使命だろう。
(評者 渡貫賢介)