情報危機!産業スパイの餌食になる民間企業
大手通信キャリアのソフトバンク株式会社は1月12日、元社員が警視庁に不正競争防止法違反の容疑で逮捕されたと発表した。同社は楽天モバイルに転職した元社員により営業機密に該当する「4Gおよび5Gネットワーク用の基地局設備や、基地局同士や基地局と交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報」が不正に持ち出されたと主張。さらに、一部報道によると警視庁が楽天モバイル本社や容疑者の職場を家宅捜索し、パソコンなどを押収。パソコンにファイル名が変更されたソフトバンクから持ち出されたとみられる秘密情報があったとしている。
一方、楽天モバイルは「当該従業員が前職により得た営業情報を弊社業務に利用していたという事実は確認されていない。5Gに関する技術情報も含まれていない」と反論している。
ロシアに情報流し有罪判決の事例も
令和2年1月25日、警視庁公安部は、ソフトバンクの機密情報を在日ロシア通商代表部の外交官に漏洩させたとして、同社元社員の荒木豊氏を不正競争防止法違反( 営業秘密の領得) の疑いで逮捕。7月9日には東京地裁が、懲役2年執行猶予4年、罰金80万円の有罪判決を言い渡した。荒木氏は逮捕当時、「小遣い稼ぎのつもりだった。こういう資料が手に入らないかと頼まれ、見返りに現金や飲食の接待も受けた」と供述していた。
「5G」を巡る情報戦
同社は「機密性の高い情報は含まれていない」としているが、公安関係者からは「完全に取り込むまでの工作の一環として幅広く情報を集めている段階だったと捉えるべきだ。昇進すれば扱う情報もより機密性が高くなる。摘発が遅れていたらそうした情報が狙われていただろう」と厳しい指摘もあがっている。
また、これに対して報復的な措置だったと考えられている事件もあった。
令和元年12月25日、極東・ウラジオストクでジャーナリスト・ビザを持つ共同通信記者がロシア当局に拘束され、取材内容を聴取された。ロシア外務省は、駐露日本大使館を通じ抗議したというが、共同通信社編集局は「通常の取材活動だった」と発表している。
産業スパイの問題は、日韓GSOMIA問題などそのほかの国の問題とも通底する。警察庁が毎年発表している「警察白書」にも「対日有害活動」を行っている国として、北朝鮮、中国と並び、ロシアも取り上げられている。
ロシアのインターネット固定回線の平均通信速度は45Mbps、日本(91.9Mbps)より遅く、各国平均(54.3Mbps)を下回る。5G商用利用を目前に迫る中、高速インターネットの日本企業の技術を模倣しようことは考えられる。グローバル経済が進展する中、各国のスパイ活動は、対政府から対民間へとシフトしつつある。
スパイに狙われることは決してフィクションの世界ではない。「スパイ天国」の現状と取り締まるための制度を確立していくことが情報を守り抜く上で重要だ。
(編集部)