【書籍紹介】『日本人の原爆投下論はこのままでよいのか』 ハリー・レイ、杉原誠四郎 共著、日新報道 刊
『日本人の原爆投下論はこのままでよいのか―原爆投下をめぐる日米の初めての対話』
本書は、米国人歴史学者と日本人教育学者に因る対話「原爆投下」(終戦70年記念)を論じた本格的な分析・判断書である。アングロサクソンと大和人との価値基準の違い。此れは当然ながら存在した。自己理論の優越と正当性の掲示が其れだ。
但し「歴史認識の一致は難しいが対等な立場で対話し合う事は出来る」(ハリー・レイ)。ハリーは、戦争の悲惨行為は日本の責任だけではない。「原爆投下への抵抗が無いのは対象が日本人で、人種差別と偏見のなせる技」。
解説で杉原は語る。ポツダム宣言受諾のタイミングは実に難しい。「日本側は戦争終結のきっかけを求め決定的な戦果を得ようとしていた」(杉原)
其の手段として「死中に活を求める」論もでた。不運なのは、我が国が非白色人種の大国であり資源の活路を求め日本嫌いのルーズベルト、そして原爆投下を美談と語るトルーマンの二代の大統領とぶつかった事。此れらの不運に見舞われてしまったという真実は重くのしかかって居るのである。特に炯眼させられたのは、「真珠湾の騙し討ち」が、外務省の怠慢による伝達のミス( 奥村勝蔵他)。此れが国益を誤らせたと指摘する杉原。「解説資料」は多くの人に読んでもらいたい。
歴史の検証は本書で成される。
(評者 文藝評論家 蓮坊公爾)