中国共産党よりも「不感症」の日本政治

湖北省・浙江省しか入国拒否できない日本の愚

対応のまずさ

 2月1日、わが国政府は新型コロナウイルスによる肺炎の拡大防止に向け、湖北省に滞在していた外国人らの入国拒否を始めた。米国やオーストラリア、フィリピン、シンガポールなどが中国全土から入国を拒否しているのに比べれば、明らかに緩い対応だ。みなさんが自由に渡航できる権利を持つ中国人ならどうするか。日本に逃げると判断する人もいるのではないだろうか。もっとも、その日本も発生源となろうとしているわけだが。憲法が「平和」をもたらしたと錯覚させられたものと相俟って、日本のサプライチェーン(原材料の調達・生産管理・物流・販売までの流れ)を極端なまでに中国に依存する状況を何よりも証明していることだろう。もちろん脱稿時と状況は目まぐるしく変わるため、最新状況についての情報収集は読者諸賢に委ねるほかないが、中国共産党の醜悪さと日本政府の対応のまずさの根本は変わっていないことだろう。

 この対応のまずさは、すぐ露見した。13日には、政府は感染が広がる浙江省にも入国規制の拡大を余儀なくされる。「水際作戦」という言葉だけが虚しく響く。

差別論を超えて

 「しんぶん国民」編集部において調査したところ、各国の新型肺炎「武漢熱」を巡る入国規制・検疫体制は以下の通りだ。

  • 米国、中国全土からの外国人の入国をすべて拒否
  • オーストラリア、中国からの入国をすべて拒否
  • フィリピン、中国・香港・マカオに滞在歴のある外国人の入国を拒否
  • 香港、検疫の対象を湖北省から中国全土に拡大
  • シンガポール、中国人と中国滞在歴のある外国人の入国を拒否
  • 日本、湖北省・浙江省滞在者や居住者のみ入国拒否

 政府が実施しているのは、14日以内に湖北・浙江省に滞在歴がある外国人やその両省で発行したパスポートを所持する外国人の入国を当面は拒否するとの措置だ。法務大臣の判断によって、これらの措置は執り行われるわけだが、これは出入国管理法第五条第一項十四号に基づく判断、すなわち「法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」と判断されたからだ。クルーズ船の乗客もこれだ。法律に既にある措置なのである。これを十二分に用いることができないのは、行政府=政治の欠陥と言わざるを得ない。

 もちろん日本政府だけの問題ではない。中国共産党指導部の傲慢さは既知の事実だが、政府の判断基準は世界保健機関(WHO)に拠って立つところは大きい。そのWHOは国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態宣言を出したわけはあるが、「人の移動や貿易の制限を勧めるものではない」と全世界に情報発信してる。中国の犬と化しているテドロス事務局長は、中国への渡航制限勧告も出していない。

中国共産党指導部の判断とその動き

 前述の入国規制について、日本のメディアでもおなじみの女性報道官、中国外交部報道局長・華春瑩は「親善の行動ではない」と国名を上げて批判した。

 3月5日に開幕する予定だった全国人民代表大会(全人代、日本のいうところの国会に相当)と全国政治協商会議(政府の諮問機関)を延期する動きも見えてきた。いずれも国の枢要を担う中国の国家組織であり、中国共産党の面子にとっても大事な年間予定であるはずだ。

 習近平指導部も安倍政権も、習近平国賓来日を見据えて理性的な判断を見失っているようだ。日本を非難する普段の口ぶりとは打って変わり、今では「中国に多大な同情と理解、支持を寄せてくれている」「日本が差し伸べた支援の手から我々にその温もりが伝わって来る」と気味が悪くなるほどべた褒めである。日本の政界に目を向ければ、国民を守るために活用すべき備蓄の中から数十万、数百万のマスクや防護服を中国に対して寄付する始末だ。守るべき日本の都市圏では市中にマスク一つ出回っていないにも関わらず、だ。

 差別論を超えて、日本国民を守る政治へと転換を図らねばならない。

しんぶん国民編集部 感染症問題取材班